信州大学医学部 耳鼻咽喉科学教室

残存聴力活用型人工内耳- 専門外来 -

難聴はコミュニケーションの大きな障害となるばかりではなく、日常生活や社会生活の質(クオリティー・オブ・ライフ:QOL)の低下を引き起こします。人工内耳は従来治療法のなかった高度難聴の患者さんに大きな福音をもたらしました。しかし人工内耳の適応は聴力が全周波数において90dB以上の重度難聴に限られているため、高音急墜型の聴力像を持つ難聴の方は適応となっておりません。

近年、手術手技の改良および電極の改良によって、低音部の残存聴力を活用可能な新しいコンセプトの人工内耳、「残存聴力活用型人工内耳」が開発されました。残存聴力活用型人工内耳により、多くの難聴の患者さんの聴き取りが改善することが期待されます。

「残存聴力活用型人工内耳」は、既に欧州でCEマークを取得し有効性が確認されていますが、欧米で用いられる言語と日本語の言語特性の違いもあるため、日本語を母国語とする日本人においても同様に有効であること確認するとともに、安全性の確認を行うことが重要です。信州大学では、「残存聴力活用型人工内耳」の有効性および安全性に関する臨床研究を推進して、日本人における有用性を明確とすることを目的に、「残存聴力活用型人工内耳挿入術」を高度医療として申請し承認されました。その後有効性が評価され、2014年7月に保険医療として提供できることになり、適応のある方に対して積極的に行っております。

【適応基準】
下記の4条件全てを満たす感音難聴患者を適応とする。

  1. 1)-1, 純音による左右気導聴力閾値が下記のすべてを満たす
    125Hz、250Hz、500Hzの聴力閾値が65dB以下
    2000Hzの聴力閾値が80dB以上4000Hz、8000Hzの聴力閾値が85dB以上
    ※ただし,上記に示す周波数のうち、1カ所で10dB以内の範囲で外れる場合も対象とする。
  2. 1)-2,
    聴力検査、語音聴力検査で判定できない場合は、聴性行動反応や聴性定常反検査(ASSR)等の2種類以上の検査において、1)-1に相当する低音域の残存聴力を有することが確認できた場合に限る。
  3. 2) 補聴器装用下において静寂下での語音弁別能が65dBSPLで60%未満である。
    ※ただし、評価は補聴器の十分なフィッティング後に行う。
  4. 3) 適応年齢は通常の小児人工内耳適応基準と同じ生後12か月以上とする。
  5. 4) 手術により残存聴力が悪化する(EASでの補聴器装用が困難になる)可能性を十分理解し受容している。